NISAの非課税枠は売ってもすぐ戻らない|簿価残高方式と「当年中の復活」見送りを整理【2026年7月】

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「NISAの枠は売れば復活する」に詰まった3つの誤解

NISAの解説でよく見かける「売却すれば非課税枠が復活する」という一文。間違いではないのですが、この短い説明の中に、取り違えが起きやすいポイントが少なくとも3つ隠れています。2026年7月時点で確認できる制度をもとに、まず用語を分解します。

NISAには性質の異なる「枠」が2種類あります。ひとつは年間投資枠で、1年間に買い付けられる金額の上限です。つみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円で、併用した場合の合計は年360万円とされています。もうひとつが非課税保有限度額で、こちらは生涯にわたって非課税で保有できる総額の上限です。金融庁のNISA特設ウェブサイトでは1,800万円とされ、そのうち成長投資枠で使えるのは1,200万円までと示されています。

そして「復活する」のは、このうち非課税保有限度額のほうだけです。しかもタイミングは売った瞬間ではありません。金融庁の「よくある質問」では、売却した商品の簿価分の非課税枠を翌年以降に再利用できる、という趣旨で説明されています。使ってしまった年間投資枠が、その年のうちに売却によって戻ることはありません。

  • 誤解1:「枠」をひとつだと思っている(実際は年間投資枠と非課税保有限度額の2階建て)
  • 誤解2:売ったらすぐ戻ると思っている(実際は翌年以降)
  • 誤解3:売った金額がそのまま戻ると思っている(次章で扱います)

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戻るのは「簿価」——値上がり益の分まで枠が復活するわけではない

3つ目の誤解が、復活する金額の計算です。NISAの非課税保有限度額は簿価残高方式で管理されています。簿価とは、ごく大まかに言えば買ったときの値段(取得価額)のことで、時価ではありません。

たとえば100万円で買った投資信託が150万円まで値上がりし、それを売却したとします。手元に入るお金は150万円ですが、翌年以降に復活する非課税保有限度額は簿価である100万円分です。差額の50万円は「非課税で得られた利益」であって、枠として戻ってくるものではありません。

この仕組みは逆方向にも働きます。100万円で買ったものが80万円に値下がりした状態で売った場合でも、復活するのは簿価の100万円分という整理になります。含み損を抱えたまま売ったからといって、生涯の枠が目減りするわけではない、という理解です。

なお、非課税保有限度額そのものの管理について、金融庁は国税庁において一括管理を行うこととされている旨を説明しています。年単位で金融機関を変更することは可能ですが、変更したからといって使った枠がリセットされて増える、ということにはなりません。

分配金の再投資も「買付け」として年間投資枠を消費する

もうひとつ見落とされやすいのが、分配金を再投資するコースを選んでいる場合です。再投資は新規の買付けとして扱われるため、その金額分だけ年間投資枠を使います。自分では追加入金していないつもりでも枠が減っていく、という現象はここから生まれます。毎月の積立額だけで年間360万円を管理していると、想定とずれることがあります。

2026年度の税制改正で「当年中の復活」は見送られた

「翌年まで待たなければならない」点は、商品の乗り換え(スイッチング)がしにくいという実務上の不便として指摘されてきました。実際、金融庁は2025年8月末に公表した令和8(2026)年度の税制改正要望で、NISAについて次の3項目を掲げています。

  • こども支援の一環としての、つみたて投資枠における対象年齢等の見直し
  • 様々な資産運用ニーズに応えるための、対象商品の拡充等
  • 投資商品の入替をしやすくするための、非課税保有限度額の当年中の復活

3つ目が、まさに「売ったその年のうちに枠を戻してほしい」という要望でした。しかしこの項目は今回の改正では見送られたとされています。与党の税制改正大綱は2025年12月19日に公表され、政府の大綱はその後2025年12月26日に閣議決定されたとされていますが、当年中の復活はそこに盛り込まれませんでした。

したがって2026年7月時点でも、NISAの枠の復活は「売却した年の翌年以降」のままです。「2026年から当年中に復活するようになる」といった説明を見かけた場合は、要望段階の情報と改正の決定内容を取り違えている可能性があります。要望として公表された内容は、そのまま制度になるとは限りません。

また、対象商品の拡充についても、毎月分配型の投資信託を対象に含めることは採用されなかったとされています。こちらも「拡充されるらしい」という話だけが独り歩きしやすい部分です。

実際に決まったのは「こどもNISA」と対象商品の拡大(2027年開始予定)

一方、要望のうち2つは改正に盛り込まれました。ひとつが、いわゆるこどもNISAです。報じられている内容を整理すると次のようになります。

  • 対象は0〜17歳(その年の1月1日時点で18歳未満)
  • 年間投資枠は60万円
  • 非課税保有限度額は600万円
  • 利用できるのはつみたて投資枠の対象商品のみで、成長投資枠は対象外
  • 開始は2027年1月以降の予定

払出しには制限が設けられ、原則として18歳になるまでは引き出せない一方、12歳以降は子ども本人の同意など一定の要件を満たせば教育費目的での払出しが可能になる方向とされています。18歳に達した後は、つみたて投資枠へ引き継がれる形が想定されています。

ここでも誤解が生じやすいのが「600万円は大人の1,800万円と完全に別枠なのか」という点です。制度解説では、成人後はこどもNISAと成人後のつみたて投資枠・成長投資枠の簿価を合算して1,800万円を超えない範囲で利用する、という整理が示されています。単純に足して2,400万円使える、という読み方にはならないようです。細かい取扱いは法案の内容と当局の公式発表を確認してください。

つみたて投資枠に加わる商品

もうひとつの改正が対象商品の拡充です。指定インデックスファンドの対象指数に読売株価指数(読売333)とJPXプライム150指数が加わるほか、これまで他の指数との組み合わせが必要だった欧州やアジア太平洋の指数を単独で使えるようにする見直しが含まれるとされています。さらに、指定インデックスファンド以外の投資信託について、要件が「主に株式に投資するもの」から「主に株式又は公社債に投資するもの」に改められ、債券の比率が50%を超えるバランス型も対象になる方向です。いずれも2027年からの適用が予定されています。

「非課税」という言葉の射程——損益通算と繰越控除は使えない

枠の話から少し離れますが、NISAで実害の出やすい誤解が「非課税だから税務上いつでも有利」という思い込みです。

NISA口座での譲渡損失は、税制上ないものとして扱われます。特定口座や一般口座の利益と損益通算することはできず、損失を翌年以降に繰り越す繰越控除も使えません。利益に課税されない代わりに、損失も税務上の材料にならないという対称的な設計です。特定口座で利益、NISA口座で損失という年に、相殺を期待していると想定が崩れます。

あわせて、使い切らなかった年間投資枠を翌年に繰り越すこともできません。「今年は40万円しか投資しなかったので来年は400万円使える」とはならず、翌年もあくまで年360万円が上限です。「枠が復活する」という言葉の印象から、繰越もできそうに感じてしまう点には注意が必要です。

なお、暗号資産(仮想通貨)に関心のある読者向けに補足すると、2026年7月時点で暗号資産はNISAの対象商品ではありません。NISAの枠の議論と暗号資産の課税の議論は、別の制度の話として切り分けて考える必要があります。

2026年7月時点で押さえておきたい5点

  • 年間投資枠(年360万円)と非課税保有限度額(1,800万円、うち成長投資枠1,200万円)は別物で、復活するのは後者のみ
  • 復活は売却した年の翌年以降。「当年中の復活」は金融庁の要望に入っていたが、今回の改正では見送られたとされる
  • 復活額は簿価。値上がり益の分は枠として戻らず、含み損でも簿価分は戻る
  • こどもNISA(年60万円・限度額600万円・つみたて投資枠のみ)と対象商品の拡大は2027年開始予定
  • NISAの損失は損益通算・繰越控除の対象外で、年間投資枠の翌年繰越もできない

本記事は2026年7月時点で確認できた公表資料および報道をもとにした整理です。税制改正の内容は関連法案の成立をもって確定するため、施行時期や細目が変わる可能性があります。実際の手続きや自分のケースへの当てはめについては、金融庁・国税庁の公式発表と、利用している金融機関の案内を必ず確認してください。特定の商品や投資行動を推奨するものではありません。

参考にした情報源

※ 本記事は 2026年7月25日 時点で公開されている情報を元に作成しています。制度や仕様は変更されることがあるため、判断の前に公式の発表をご確認ください。

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