「火災保険は5年一括で約1割安い」の前提条件と例外|途中解約・値下がり地域・地震保険の割引幅【2026年10月】

  • 2026.10.07
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「約1割安い」は何と何を比べた数字か

火災保険の見直しでよく聞くのが「長期契約にして一括で払えば安くなる」という話です。間違いではありませんが、どれだけ安くなるかは条件によって変わります。まず、数字の意味を確認します。

火災保険は以前、最長10年で契約できました。しかし自然災害による保険金の支払いが増え、長い期間の収支を予測しにくくなったことから、2022年10月から各社とも最長5年になりました。今、長期契約といえば実際には2〜5年のことです。

価格比較サイトでは、2024年10月1日時点の例として、1年契約を毎年続けた場合と比べた割引率を次のように紹介しています。

  • 2年契約:約5.08%
  • 3年契約:約7.06%
  • 4年契約:約9.30%
  • 5年契約:約10.64%

5年一括で払うと、1年契約のおよそ4.47年分の保険料で5年間の補償が受けられる計算です。ただし、この割引率は各社が使う「長期係数」で決まり、保険会社や商品によって違います。ご自身の契約は見積書の長期係数で確認してください。

試算(仮定):1年契約の保険料を年30,000円とします。1年契約を5年続けると150,000円です。5年一括なら30,000円×5×(1−0.1064)で134,040円になり、差は15,960円、1年あたり約3,200円です。ここで大事なのは、この差が「1年契約の保険料が5年間変わらない」という前提で計算されていることです。以下では、この前提が崩れる場合を順に見ていきます。

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前提1:5年間その家に住み続ける|途中で解約すると割引分が消えることも

長期一括払いの契約を途中で解約すると、残りの期間に応じた保険料が「解約返戻金」として戻ってきます。ただし、払った金額を単純に月数で割って返すわけではありません。多くの場合、保険会社ごとに決められた「未経過料率」という係数を、一括で払った保険料に掛けて計算します。

価格比較サイトでは、5年契約を2年後に解約した場合の未経過料率を55%とする例が紹介されています。単純に残りの期間で割れば、残り3年分で60%です。それより少し低い数字になっています。この係数は会社や商品によって違うため、あくまで一例です。

試算(上の例の続き、仮定):134,040円を一括で払い、2年後に引っ越して解約した場合、返戻金は134,040円×55%で73,722円です。2年間の実際の負担は60,318円になります。一方、1年契約を2年続けた場合の負担は60,000円です。2年で解約すると、5年一括の得はほとんど残らないことになります。

このほか、次のような場合にも注意が必要とされています。

  • 長期一括払いや年払いでは、残りの期間のうち1か月未満の日数は原則として返戻金の計算に入らない
  • 月払いの契約は、一般的に解約返戻金がない
  • 商品によっては、そもそも解約返戻金がない

転勤の可能性がある世帯、数年以内に住み替えを考えている賃貸世帯、売却を予定している持ち家世帯は、5年一括の割引をそのまま得になる金額と考えないほうが安全です。

前提2:保険料が上がり続ける|2026年10月の改定と、下がる地域の例外

長期契約のもう一つの利点は、契約期間中に保険料が値上げされても、その影響を受けないことです。この数年、火災保険料は上がり続けています。

  • 2023年6月、保険料の目安となる「参考純率」を損害保険料率算出機構が全国平均で13.0%引き上げました。これを受けて、2024年10月から各社が保険料を改定し、大手4社の値上げ幅は全国平均で10%前後と報じられました
  • 2024年10月の改定では、それまで全国一律だった水災の料率を、多くの会社が地域のリスクに応じて5つの区分に分けました。報道によると、水災を含めた保険料全体で最大約1.2倍の差がつくとされています
  • 2026年5月28日の日本経済新聞の報道によると、損保ジャパンは2026年10月から個人向け火災保険料を平均3%引き上げるとしています。対象は10月以降に新しく加入する契約と、更新する契約です。値上げの理由は、インフレで住宅の修理費が上がっていることとされています

試算(仮定):1年契約の保険料が毎年3%ずつ上がると仮定すると、5年間の合計は約159,274円です。5年一括の134,040円との差は約25,234円に広がります。値上げが続く時期ほど、長期契約の利点は大きくなります。

ただし、例外もあります。改定率はあくまで「平均」です。水災リスクが低い区分の地域や、建物の構造・築年数によっては、保険料が下がる場合もあるとされています。そうした家で改定の直前に5年契約を結ぶと、下がる前の料率で5年間固定されることになります。さらに、5年間は補償の内容もそのままになります。ハザードマップを見直した結果、水災補償を外すといった見直しは、途中解約と再契約が必要になり、前の項目で説明した返戻金の問題がついてきます。

地震保険は割引が小さい|長期係数は5年で4.70

火災保険と一緒に契約することが多い地震保険も、最長5年の長期契約ができます。ただし、割引の幅は火災保険より小さめです。2026年3月更新の住宅情報サイトの記事によると、地震保険の長期係数は2022年10月に改定され、次のようになっています。

  • 2年:1.90(年あたり約5.0%の割引)
  • 3年:2.85(同約5.0%)
  • 4年:3.75(同約6.25%)
  • 5年:4.70(同約6.0%。改定前の4.65からは割引が縮小)

試算(仮定):地震保険料が年20,000円なら、5年一括は20,000円×4.70で94,000円です。1年契約を5年続けた100,000円との差は6,000円で、1年あたり1,200円になります。2年契約と5年契約の割引率は年あたりでほぼ同じなので、「長いほど得」とは単純に言えません。

また、地震保険は単独では入れず、火災保険に付ける形で契約します。保険金額にも上限があり、建物は5,000万円、家財は1,000万円です。火災保険の期間と合わせて契約するのが一般的なため、火災保険を途中で解約すると、地震保険もあわせて扱いを確認する必要があります。地震保険料は所得税で最高5万円の地震保険料控除の対象です。長期一括で払った場合に各年の控除額がどうなるかは、保険会社が発行する控除証明書の金額と、国税庁の案内で確認してください。

5年一括を選ぶ前に確認したい4項目

ここまでの内容を、家計で判断するためのチェック項目にまとめます。

  • 住む予定は5年以上か:上の例では、2年で解約すると割引分はほぼ残りませんでした。転勤や住み替えの可能性があるなら、2〜3年契約や1年契約も比べる
  • まとめて払っても生活費に余裕が残るか:年30,000円の例でも、5年一括なら約13.4万円を一度に払います。そのために生活防衛資金が減る場合は、割引額の1年あたり約3,200円と比べて考える
  • 満期が改定の前か後か:2026年10月以降に更新する契約には、新しい料率が使われると報じられています。見積もりは改定前と改定後の両方の条件で出してもらい、地域や構造による上がり下がりを確認する
  • 5年間、補償を変える予定はないか:水災補償の要否、家財の保険金額、建物の評価額などを見直す予定があるなら、契約期間を短くしたほうが調整しやすい

「5年一括で約1割安い」は、同じ家に住み続け、補償内容を変えず、保険料が下がらない場合には、おおむねそのとおりになります。反対に、住み替えの予定がある世帯や、水災リスクが低く保険料が下がる可能性がある地域の世帯では、割引が小さくなったり、なくなったりします。この記事の数値は2026年10月時点で確認できた公表資料・報道・比較サイトの例によるものです。契約前には、各社の重要事項説明書と見積書で、長期係数と解約返戻金の計算方法を確認してください。

参考にした情報源

※ 本記事は 2026年10月7日 時点で公開されている情報を元に作成しています。制度や仕様は変更されることがあるため、判断の前に公式の発表をご確認ください。

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