仮想通貨の「時価総額」は資金流入額ではない|FDV・循環供給量・ドミナンスの誤解を整理【2026年7月】

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「時価総額1兆ドル」は、その金額のお金が入ってきたという意味ではない

仮想通貨のニュースで最も頻繁に登場する指標が時価総額です。計算式そのものは単純で、価格 × 循環供給量(流通枚数)しかありません。CoinGeckoの表示では、2026年7月25日時点でビットコインは1BTC=約6万4,020ドル、循環供給量は20,061,034BTC、時価総額は約1兆2,841億ドルとなっています。実際に掛け算すると、ほぼこの数字に一致します。

ここで誤解されやすいのが、この1兆2,841億ドルを「1兆2,841億ドルの資金が入っている市場」と読んでしまうことです。時価総額は直近で成立したたった1件の価格に、流通枚数を機械的に掛けた数字にすぎません。極端に言えば、1BTCが1ドル動いたとき、実際に売買されたのが1枚だけでも、時価総額は約2,000万ドル動きます。

実際の売買規模と並べると差がはっきりします。同じ2026年7月25日時点で、ビットコインの24時間出来高は約238億ドル、時価総額の2%弱にとどまります。市場全体でも、総時価総額約2兆2,700億ドルに対して24時間出来高は約558億ドルでした。時価総額は「保有されている資産の評価額の合計」であって、「そこに投じられた現金の総額」でも「全員が同時に引き出せる金額」でもない、という点が出発点になります。

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循環供給量という分母には、集計者の判断が入っている

時価総額のもう一方の要素である循環供給量も、実は機械的に決まる数字ではありません。同じ2026年7月25日時点のCoinGeckoの表示では、XRPは循環供給量が約625億3,000万XRP、総供給量が約999億8,600万XRP、上限が1,000億XRPです。総供給量と循環供給量の差は約374億5,000万XRPあり、この分は価格に掛け算されていません。

XRPは「動かせるのに流通外」として扱われる分がある

この差の大きな部分は、Ripple社が2017年に550億XRPをXRP Ledger上のエスクローに預け入れた経緯に由来します。エスクローはプロトコルのレベルで強制されるロックで、条件を満たすまで前倒しで取り出すことはできず、内容は公開台帳上で誰でも検証できるとされています。仕組みとしては毎月10億XRPが自動的に解放され、そのうち6〜8億XRP程度が短期間で再ロックされ、純増は月2〜3億XRP程度にとどまるのが従来の運用だと説明されています。エスクロー残高については、Messariの「State of XRP Q1 2026」が2026年5月時点で約330億XRPと集計しています。ただしこれは二次的な集計であり、最新値はXRP Ledgerのエクスプローラなど一次データで確認してください。なおRipple社は2025年5月に四半期レポート「XRP Markets Report」の公表を停止したとされ、公式にまとまった数字が以前より減っている点も踏まえておきたいところです。

ビットコインは「動かせないのに流通内」の分がある

ビットコインでは逆方向のズレが起きます。秘密鍵を紛失した、所有者が亡くなって鍵が引き継がれなかった、初期に採掘されたまま一度も動いていない——こうしたコインは、オンチェーン上では生きているアドレスと区別できません。Chainalysisの推計では約280万〜380万BTCが恒久的に失われた可能性があるとされていますが、これらは循環供給量に含まれたままです。つまりXRPとビットコインでは「流通」の意味が真逆にずれており、時価総額を横並びで比べるときはこの前提の違いが残ったままになります。

FDV(完全希薄化評価額)は、サイトによって分母が違う

FDVは時価総額の「将来版」として使われる指標です。2026年7月25日時点のCoinGeckoでは、XRPは時価総額約681億ドルに対してFDVが約1,089億ドル、約1.6倍の開きがあります。これは未流通の約374億XRPが将来市場に出てくると仮定した評価額です。

ところが同じページでビットコインのFDVは約1兆2,841億ドル、つまり時価総額とほぼ同額と表示されます。上限の21,000,000枚で計算すれば約1兆3,440億ドルになるはずですが、そうなっていません。CoinGeckoのFDVは上限供給量ではなく「すでに発行済みの総供給量」を分母にしているためで、ビットコインは総供給量と循環供給量が一致するのでFDVも時価総額と重なります。サイトによっては上限ベースでFDVを出しているところもあるため、別サイトのFDVを単純比較するのは避けた方が無難です

新規上場したばかりのトークンでは、流通比率が低く時価総額とFDVが数倍から数十倍離れることもあります。ただし「差が10倍だから10倍の売り圧力」という単純な話ではなく、実務的にはアンロック(ベスティング)のスケジュールと配分先を見るべきだと指摘されています。差の大きさそのものより、いつ・誰に・どれだけ出てくるのかが重要という整理です。

「上限2,100万枚」と半減期の関係も、しばしば取り違えられる

ビットコインは20,061,034BTCが発行済みで、上限2,100万枚に対して約95.5%に達しています(2026年7月25日時点)。残りは約94万BTCです。この数字だけを見ると「もうすぐ枯渇する」と読めますが、新規発行のペースは半減期で段階的に落ちていきます。

直近の半減期は2024年4月20日、ブロック高840,000で発生し、1ブロックあたりの報酬は6.25BTCから3.125BTCへ半減しました。次回はブロック高1,050,000、2028年4月ごろの見込みとされ、報酬は1.5625BTCになります。以降も約4年ごとに半減が続くため、残り4.5%が出尽くすのは2140年ごろとされています。見るべきは「残り枚数」ではなく「年間の新規発行ペース」ということになります。

逆にXRPは総量が減る設計です。取引ごとに少額の手数料が焼却(バーン)されるため、上限1,000億XRPに対して総供給量は約999億8,600万XRPまで減っています(同日時点)。差は約1,400万XRP分です。「デフレ設計」と紹介されることもありますが、月に数億XRP規模で解放が進む側と比べれば、量的なインパクトはかなり小さいことも数字から読み取れます。

ドミナンスと出来高は「どこまで集計したか」で動く

ドミナンス上昇は、ビットコイン上昇と同義ではない

2026年7月25日時点のCoinGeckoでは、ビットコインのドミナンスは56.53%、イーサリアムは9.94%です。誤解の一つ目は、ドミナンスが分数であるという点です。ビットコインの価格が動かなくても、他の銘柄が下落すれば分母が縮むためドミナンスは上がります。二つ目は分母の定義です。CoinGeckoは、二重計上を避けるためwrapped・bridged・stakedといった裏付け型トークンを総時価総額から除外していると明記しています。集計対象は16,746銘柄・1,509取引所で、当然ステーブルコインも分母に含まれます。除外ルールが違えば数字も変わるため、サイトを混ぜて比較するとズレます。ちなみに同ページの総時価総額は前年同期比で42.18%減と表示されており、ドミナンスを見るときは分母自体が大きく動いていることも意識したいところです。

出来高は、集計対象取引所に依存する

出来高については、2019年3月にBitwise Asset Managerが米SECへ提出した分析が有名です。分析対象81取引所のうち71取引所では報告されている出来高の大部分が実体のない洗い売買(ウォッシュトレード)と見られ、当時1日約60億ドルとされていたビットコインの出来高は、実質約2億7,200万ドルにすぎないと報告されました。これは7年以上前の調査で、その後の主要取引所の質は改善したとされていますが、どの取引所を集計対象に入れるかで数字が変わる構造そのものは今も同じです。約定しやすさを測りたいなら、出来高より板の厚みやスプレッド、実際のスリッページを見る方が実務的だと言えます。

日本の投資家の手取りを左右するのは、これらの指標ではない

ここまで見てきた時価総額・FDV・ドミナンス・出来高は、いずれも税額には直接関係しません。個人の場合、現行ルールでは原則として売却・他の暗号資産への交換・決済などで利益が確定した時点で所得として認識され、含み益の段階では課税されません(2026年7月時点)。所得区分や税率の扱いは国税庁の資料で確認してください。

むしろ実務で効いてくるのは取得価額の計算方法です。同一の暗号資産を2回以上購入した場合、総平均法と移動平均法のいずれかを選べますが、暗号資産の種類ごとに選定し、税務署長への届出が必要とされています。届出をしていない場合は総平均法が適用されます。国税庁は「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて」のFAQ(令和7年12月版)と、総平均法用・移動平均法用それぞれの計算書(Excel)を公開しています。同じ売買履歴でも選ぶ方法によって年内の損益額は変わるため、こちらの方が家計への影響は直接的です。

本記事の市場データはすべて2026年7月25日時点のCoinGeckoの表示に基づいています。指標を読むときは「いつの数字か」「どのサイトの集計か」「どの定義の供給量か」の3点をセットで確認するのが安全です。制度や税務の取扱いは改正されることがあるため、判断の前に必ず公式の発表を確認してください。

参考にした情報源

※ 本記事は 2026年7月25日 時点で公開されている情報を元に作成しています。制度や仕様は変更されることがあるため、判断の前に公式の発表をご確認ください。

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