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2026年7月時点でも、暗号資産の利益は「雑所得・総合課税」のまま
ビットコインやリップル(XRP)などの売買で得た利益は、国税庁のタックスアンサーNo.1524(令和7年4月1日現在の法令等に基づく)のとおり、原則として雑所得に区分され、給与など他の所得と合算して税額を計算する総合課税の対象です。2026年7月時点で、この扱いは変わっていません。
総合課税である以上、所得税は課税所得に応じて5%から45%までの超過累進税率が適用され、これに住民税10%が加わります。単純合計で最大55%、復興特別所得税(所得税額の2.1%)まで含めると最大55.945%になる、というのが実務でよく使われる数字です。上場株式等の譲渡益が一律20.315%であることと比べると、所得が大きい人ほど負担の差が開きます。
国税庁は「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて」(FAQ)を毎年更新しており、現在の最新版は令和7年12月に公表されたもので、令和7年12月1日現在の法令・通達等に基づいて作成されています。所得区分については、暗号資産取引の収入金額が300万円を超え、かつ帳簿書類の保存がある場合には事業所得として扱われる余地があるとされています。自分がどちらに当たるか迷う場合は、FAQの該当箇所を確認してください。
2027年から「防衛特別所得税」が始まるが、単年度の負担率は変わらない設計
令和9年(2027年)1月1日以後の所得からは、所得税額の1%に相当する防衛特別所得税が創設される予定です。同時に復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%へ引き下げられるため、単年度で見た付加税の合計は2.1%のままで、前述の「最大55.945%」という水準そのものは当面変わらない見込みとされています。ただし復興特別所得税の課税期間は2037年までから2047年までへ10年延長される設計とされており、長期で見れば負担がなくなるわけではありません。
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課税されるのは「日本円に換えたとき」だけではない
初心者が最もつまずきやすいのが課税タイミングです。現行制度では、利益が実現したと扱われる場面は日本円への売却だけではありません。国税庁のFAQでは、少なくとも次のような場面が課税対象として整理されています。
- 暗号資産を売却して日本円などの法定通貨に換えたとき
- 暗号資産で商品やサービスの代金を決済したとき
- 暗号資産を別の暗号資産に交換したとき(例:ビットコインでXRPを買う)
- マイニング、ステーキング、レンディングなどで報酬を受け取ったとき
特に見落とされやすいのが暗号資産同士の交換です。日本円を1円も受け取っていなくても、交換の時点で保有していた暗号資産を時価で譲渡したものとして所得計算が必要になります。逆に、買ったまま持ち続けているだけの含み益には課税されません。「日本円に出金していないから申告不要」という理解は誤りなので、年内の取引履歴は交換分まで含めて洗い出しておく必要があります。
取得価額は「総平均法」が原則、移動平均法を使うなら届出が必要
同じ銘柄を複数回買っている場合、取得価額の計算方法は総平均法と移動平均法のいずれかを選べます。国税庁の手続案内「A1-21 所得税の暗号資産の評価方法の届出手続」によれば、届出をしなかった場合の法定評価方法は総平均法です。移動平均法を使いたい場合は、その暗号資産を新たに取得した日(または従来と種類が異なる暗号資産を取得した日)の属する年分の確定申告期限までに、暗号資産の種類ごとに届出書を提出する必要があります。いったん選んだ方法を変更するには別途、変更承認申請の手続が必要です。
どちらを選ぶかで年ごとの所得金額は変わりますが、売り切るまでの通算では大きな差にならないのが一般的です。それよりも、届け出ていないのに移動平均法で計算してしまう食い違いのほうが問題になりやすい点に注意してください。
20%の申告分離課税は「いつから」か──起点は2026年7月に成立した金商法改正
ここ数年話題になっている「暗号資産も株と同じ20%に」という改正は、2026年7月時点でまだ適用が始まっていません。時系列を整理すると次のとおりです。
- 2025年12月:令和8年度税制改正大綱に、暗号資産取引への20%(所得税15%+住民税5%、別途復興特別所得税等)の申告分離課税導入が盛り込まれる
- 2026年4月10日:「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」が第221回国会に提出される
- 2026年7月15日:同法案が参議院本会議で可決・成立
- 2026年7月23日:公布
この法律は、暗号資産取引の根拠法令を資金決済法から金融商品取引法へ移し、暗号資産を有価証券とは別類型の「金融商品」として位置づけるものです。インサイダー取引規制の創設、発行者等による情報公表規制、無登録業者への対応強化なども盛り込まれています。
肝心の施行日は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日とされています。そして申告分離課税は、この施行日の属する年の翌年1月1日以後に行う譲渡から適用されると解説されています。ここから逆算すると、実際の適用開始は令和10年(2028年)1月1日以後になるとの見方が有力です。ただし政令で定める施行日は本記事執筆時点で確定していないため、最終的な適用開始時期は金融庁・国税庁の公表資料で確認してください。
裏を返せば、2026年分(2027年に申告)と2027年分(2028年に申告)の確定申告は、現行の総合課税で行うことになる見込みです。分離課税が導入された取引については、損失について3年間の繰越控除が認められるとされていますが、これも適用開始後の話です。
「すべて20%になる」わけではない──対象は「特定暗号資産」に限られる見込み
もう一つ誤解が多いのが、対象範囲です。大綱で20%の対象とされているのは「特定暗号資産」であり、これは金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等を指すと説明されています。対象取引は、登録された業者を通じた現物の譲渡等、特定暗号資産を対象とする暗号資産デリバティブ取引、いわゆる暗号資産ETFなどとされています。
複数の税理士事務所・法律事務所の解説では、次のようなものは分離課税の対象外で総合課税のまま残ると見込まれています。
- 海外取引所での売却、DEX(分散型取引所)での取引、個人間の直接取引
- 「特定暗号資産」に該当しない銘柄の取引
- ステーキング報酬、マイニング報酬、レンディング利息など「譲渡」に当たらない所得
損益通算の範囲も限定的で、特定暗号資産の取引で生じた損失を上場株式等の利益と通算することは想定されていないとされています。あわせて、暗号資産取引業を行う者には取引内容の報告書提出義務が課される方向で、税務当局が把握できる情報は増える見通しです。いずれも詳細は法令・政省令で確定するため、現時点の解説はあくまで見込みとして受け止めるのが安全です。
滞納時の徴収手続も2027年4月から強化される見込み
令和8年度税制改正大綱には、税を滞納した場合の徴収手続の整備も盛り込まれています。ブロックチェーン上の暗号資産を含む「特定電子移転財産権」を税務当局が差し押さえられるようにし、直接の差押えが困難な場合には滞納者に対して指定ウォレットへの移転を命じられるようにする、という内容です。命令に従わない場合には3年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金といった罰則が設けられるとされ、2027年4月1日からの施行が予定されていると解説されています。
2026年内に期限が来る手続き──CARFの「届出書」提出
税率の話とは別に、2026年12月31日という期限が迫っている手続きがあります。OECDが策定した暗号資産等報告枠組み「CARF(Crypto-Asset Reporting Framework)」に基づく届出です。日本では2026年1月1日から施行されました。
制度の概要は次のとおりです。国内の暗号資産交換業者は、報告対象となる利用者について、暗号資産の種類ごとの売却・購入の対価の合計額や取引数量などを、翌年4月30日までに税務署へ報告する義務を負います。報告された情報は租税条約等に基づいて各国の税務当局間で自動的に交換され、初回の情報交換は2027年に想定されています。2024年11月時点で60を超える国・地域が2027年または2028年までの情報交換開始を表明しているとされています。
利用者側に求められるのは、税務上の居住地国などを記載した届出書の提出です。報道および各社の案内によれば、2025年12月31日時点で口座を保有している人は2026年12月31日までに提出、2026年1月1日以後に新規開設する人は開設時に提出する扱いとされています。届出内容は氏名、住所、生年月日、税務上の居住地国、該当する場合は納税者番号などです。コインチェックは2026年1月6日にユーザーへ案内を送付しており、bitFlyerも2026年1月1日から12月31日までの提出を案内しています。未提出の場合の取り扱いは事業者ごとに異なる可能性があるため、利用中の取引所からの通知を確認してください。
2026年分の確定申告に向けて、年内に整理しておきたいこと
制度の先行きが動いている時期だからこそ、手元でできることは絞られます。2026年分の申告は現行ルールで行う前提で、次の点を年内に片づけておくと後が楽になります。
- 取引履歴の保全:国内外の取引所から年間取引報告書やCSVをダウンロードしておく。海外取引所はサービス終了や仕様変更で過去データを取り出せなくなることがある
- 交換・決済分の洗い出し:暗号資産同士の交換、決済利用、ステーキング報酬の受領履歴を漏らさない
- 評価方法の確認:移動平均法を使うつもりなら届出書を提出済みか確認する。未提出なら総平均法で計算する
- CARFの届出書:2026年12月31日の期限を過ぎていないか確認する
- いわゆる20万円ルールの確認:給与を1か所から受けて年末調整が済んでおり、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下であれば所得税の確定申告が不要になる場合がありますが、住民税は別途申告が必要とされています。医療費控除やふるさと納税などで確定申告をする場合は、20万円以下でも暗号資産の所得を含めて申告する必要があります。要件は国税庁の確定申告の手引きで確認してください
また、現行制度では暗号資産の損失を翌年以降に繰り越すことも、給与所得などと損益通算することもできません。含み損のあるポジションをどう扱うかは、この点を踏まえた判断になります。一方で「2028年に20%になるまで売却を待つ」という発想は、施行日が政令で確定していないことに加え、その間の価格変動リスクを丸ごと負うことになります。税制の見込みだけを理由に売買のタイミングを決めるのは避け、最終的な取り扱いは所轄税務署や税理士に確認するのが確実です。本記事の内容は2026年7月25日時点で公表されている情報に基づくもので、今後の法令・政令の制定により変わる可能性があります。
参考にした情報源
- No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係|国税庁
- 暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和7年12月)|国税庁
- A1-21 所得税の暗号資産の評価方法の届出手続|国税庁
- 暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CARFコーナー」)|国税庁
- 閣法 第221回国会 57 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案(議案経過情報)|衆議院
- 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案の概要|金融庁
※ 本記事は 2026年7月25日 時点で公開されている情報を元に作成しています。制度や仕様は変更されることがあるため、判断の前に公式の発表をご確認ください。
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