暗号資産の損益計算は「総平均法」が原則|移動平均法の届出書と変更申請の期限を整理【2026年7月】

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暗号資産の利益は「雑所得・総合課税」が原則(2026年7月時点)

暗号資産(仮想通貨)を売却したり、他の暗号資産と交換したり、決済に使ったりして生じた利益は、原則として雑所得に区分され、給与などと合算して累進課税される総合課税の対象になります。上場株式や国内FXのような申告分離課税ではないため、他の所得が多い人ほど適用される税率が高くなる構造です。

実務上の拠り所になるのが、国税庁が公開している「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」です。2026年7月時点で国税庁サイトに掲載されている最新版は令和7年12月版で、FAQ本体は67ページ。令和8年(2026年)1月に更新が案内され、このときは「2-2 暗号資産取引の所得区分」が更新項目として挙げられています。毎年12月前後に改訂されるため、申告前には版数を確認する習慣を持っておくと安全です。

所得区分については、事業所得等の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として雑所得とされています。例外として、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超え、かつ暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合は、原則として事業所得に区分されるという整理が示されています。ただし帳簿書類の保存があっても営利性が認められない場合などは個別に判断するとされており、「300万円を超えれば自動的に事業所得」という単純な話ではない点に注意が必要です。

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届出をしなければ、自動的に「総平均法」になる

意外と知られていないのが、損益計算の方法が届出の有無で自動的に決まってしまうことです。所得税では暗号資産の評価方法として総平均法と移動平均法が認められていますが、「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を提出して選定しなかった場合には、総平均法によって評価することとされています。つまり、何もしなければ総平均法です。

届出書の提出期限は、暗号資産を新たに取得した日、または従来取得している暗号資産と種類が異なる暗号資産を取得した日の属する年分の確定申告期限までとされています。提出先は納税地を所轄する税務署で、e-Taxソフトまたは書面で作成・提出できます。

もう一つ重要なのが、評価方法は暗号資産の種類ごとに選定するという点です。ビットコインについて移動平均法を届け出ていても、その効力が自動的にイーサリアムやXRPに及ぶわけではありません。新たな種類を取得した年には、その種類について改めて届出が必要になります。逆に、その取得の年の前年以前に同じ種類の暗号資産を取得している場合は、提出する必要はないとされています。

したがって、2026年中に初めてある種類の暗号資産を買った人が移動平均法を使いたいのであれば、令和8年分の確定申告期限(原則として2027年3月15日)までに届出書を出しておく、という段取りになります。

総平均法と移動平均法は何が違うのか

  • 総平均法…1年間に取得した暗号資産の取得価額の合計を、その年の総取得数量で割って、年間で1本の平均単価を出す方法。取引所が発行する年間取引報告書の数字をそのまま使いやすく、計算の手間が小さい
  • 移動平均法…取得のつど平均単価を計算し直す方法。売却時点の実態に近い取得原価を反映できる一方、取引回数が多いと計算負荷が大きい

継続して同じ方法を適用していれば、保有をすべて解消した時点での累計の損益は近い値に収れんしていくとされていますが、年ごとの所得の出方は変わります。年末に価格が大きく動いた年などは、どちらを採用しているかでその年の税額が変わり得るということです。

いったん決めた方法を変えるには「その年の3月15日」が期限

すでに評価方法を実施している人がそれを変更したい場合は、「所得税の暗号資産の評価方法の変更承認申請書」を提出します。ここで間違えやすいのが期限で、国税庁の手続案内では提出時期は変更しようとする年の3月15日までとされています。翌年の確定申告期限ではなく、その年の3月15日です。

この違いは実務上かなり大きく、2026年7月時点で考えると、令和8年(2026年)分の計算方法を変更する申請期限はすでに経過していることになります(2026年3月15日は休日にあたるため、実務上は翌開庁日が期限)。いま変更を検討している人が次に狙えるのは令和9年(2027年)分で、その申請期限は2027年3月15日までということになります。

また、申請書を提出したあと、その年の12月31日までに承認または却下の処分がなかったときは、その日に承認があったものとみなされる、といういわゆる「みなし承認」の扱いが設けられています。なお、変更前の方法を採用してから相当期間が経過していない場合などには承認されないことがあるとされていますので、頻繁な切り替えを前提にした運用はおすすめできません。詳細な要件は必ず国税庁の手続案内で最新の記載を確認してください。

「20万円以下なら申告不要」は所得税だけの話

暗号資産の税金でもっとも誤解が多いのが、いわゆる20万円ルールです。国税庁のタックスアンサーNo.1900では、給与を1か所から受けていて、かつその給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告が必要とされています。給与を2か所以上から受けている場合は、年末調整されなかった給与の収入金額と各種の所得金額の合計額が20万円を超えるかどうかで判定します。

ここから読み取るべき注意点は3つあります。

  • 20万円は「所得」であって「収入」ではない…必要経費を差し引いたあとの金額で判定します
  • これは所得税の話に限られる…住民税には同様の20万円基準がなく、所得税の確定申告が不要な場合でも、お住まいの市区町村へ住民税の申告が必要とされています
  • 他の理由で確定申告をするなら合算が必要…医療費控除や住宅ローン控除の初年度、ふるさと納税でワンストップ特例を使わない場合などは確定申告書を出すことになるため、20万円以下であっても暗号資産の所得を申告内容に含める必要があります

「利益が小さいから何もしなくてよい」と考えて住民税申告を落としてしまうケースは珍しくありません。判断に迷う場合は、お住まいの自治体の税務担当窓口に確認するのが確実です。

損失は翌年に繰り越せない──年内で完結させる発想が要る

雑所得に区分される以上、暗号資産の損失の扱いも株式などとは大きく異なります。所得税法上、他の所得と損益通算できる損失は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の計算上生じたものに限られており、雑所得の損失を給与所得などから差し引くことはできません

さらに、上場株式等の譲渡損失のような翌年以降3年間の繰越控除も認められていません。年をまたいだ瞬間に、その損失は税務上使い道がなくなるということです。一方で、同じ年の中であれば、雑所得に区分される所得どうしで通算することは可能とされています。暗号資産の損失と、他の雑所得(たとえば一定の副業収入など)の利益を同じ年の中で相殺する、という考え方です。

この非対称性があるため、暗号資産の損益は「年内でどう着地させるか」を意識せざるを得ません。ただし、税負担だけを理由に売買判断を歪めるのは本末転倒ですし、含み損の実現をどう扱うかは個別事情に左右されます。具体的な判断は税理士や所轄税務署に確認してください。

2026年後半のうちに手を動かしておきたいこと

制度の理解ができたら、あとは記録の整備です。2026年7月時点で、次の準備は年内に進めておけます。

  • 年間取引報告書の入手経路を確認する…国税庁は平成30年1月1日以後の暗号資産取引について、暗号資産交換業者に対して年間取引報告書の交付を依頼しています。国内の交換業者を使っているなら翌年初に受け取れるのが通常ですが、海外取引所やDeFi、個人間の取引はこの対象外なので、自分で履歴を保存しておく必要があります
  • 国税庁の「暗号資産の計算書」を先に触っておく…総平均法用と移動平均法用のExcelが公開されており、年間取引報告書の数字を転記すると所得金額が計算できます。複数の取引所を使っている場合は、すべての報告書を合算して入力する形になります
  • 売却以外の課税タイミングを取りこぼさない…暗号資産同士の交換や、暗号資産による商品の購入も損益が実現する場面です。マイニング・ステーキング・レンディングで受け取った暗号資産についても、取得時点の時価が総収入金額に算入され、要した費用は必要経費に算入されるという整理が示されています
  • 評価方法をどうするか決めておく…新しい種類を今年買ったなら届出書の選択肢がありますし、既存分の変更は2027年3月15日という次の期限を意識しておく必要があります

本記事は2026年7月時点で公開されている国税庁の手続案内およびFAQ(令和7年12月版)をもとに整理したものです。暗号資産の課税方式については毎年の税制改正で議論が続いており、記載内容が将来変更される可能性があります。実際に手続きをする際は、必ず国税庁の公式発表と最新版のFAQを確認し、判断に迷う点は税理士や所轄税務署にご相談ください。

参考にした情報源

※ 本記事は 2026年7月26日 時点で公開されている情報を元に作成しています。制度や仕様は変更されることがあるため、判断の前に公式の発表をご確認ください。

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