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固定費は「金額の大きい順」ではなく「動かせる順」に並べ替える
総務省統計局が2026年7月7日に公表した家計調査報告(家計収支編)によると、2026年5月の二人以上の世帯の消費支出は1世帯あたり320,345円で、前年同月比は実質0.4%の減少、名目では1.3%の増加でした。物価が上がった分だけ支出額は膨らみ、買っている量はむしろ減っている、という構図です。
この状態で効くのは、買い物のたびに我慢する変動費の節約ではなく、一度手を動かせば翌月以降ずっと効く固定費の組み替えです。ただし固定費は「金額の大きい順」に手をつけると挫折しやすい面があります。住宅ローンや家賃は最も金額が大きい一方で、動かすのに最も時間と費用がかかるからです。
実務的には、固定費を次の3層に分解すると優先順位がつけやすくなります。
- 第1層:制度や単価によって外から動かされるもの(電気・ガス。補助金や燃料費調整の影響を受ける)
- 第2層:契約を替えれば自分で動かせるもの(通信、保険、サブスクリプション)
- 第3層:動かすのに審査や費用が必要なもの(住宅ローン、家賃、車の保有そのもの)
削減の優先順位は「削減額 × 実行のしやすさ × 効果が続く期間」で決めます。以下、2026年7月時点で確認できた公表情報をもとに、層ごとに整理します。
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第1層:電気・ガスは「補助が切れる時期」から逆算する
経済産業省・資源エネルギー庁の電気・ガス料金支援の特設サイトによると、2026年は7月使用分から9月使用分までを対象に支援が実施されています。2026年5月に決定されたもので、補助単価は使用月によって異なります。
- 電気(低圧=一般家庭):7月・9月使用分は3.5円/kWh、8月使用分は4.5円/kWh
- 電気(高圧):7月・9月使用分は1.8円/kWh、8月使用分は2.3円/kWh
- 都市ガス:7月・9月使用分は14.0円/㎥、8月使用分は18.0円/㎥
ここで注意したいのが「使用分」の定義です。同サイトでは、7月使用分は「7月中の検針日から8月中の検針日までの使用に係る分」と説明されています。つまり請求書に補助が反映されるのは、体感より1か月ほど後ろにずれるということです。
金額感をつかむために単純計算してみます。月400kWhを使う家庭なら3.5円/kWhで1,400円、4.5円/kWhなら1,800円。都市ガスを月30㎥使うなら14.0円/㎥で420円です。裏を返せば、9月使用分で支援が区切られると、10月以降の請求ではこの分が上乗せされて戻ってくることになります。契約プランも使い方も変えていないのに請求額が増えるため、「なぜか高くなった」と感じやすいタイミングです。なお2026年10月以降の支援の有無は本稿執筆時点で確認できていません。延長の可否は資源エネルギー庁の公式発表を確認してください。
だからこそ電気・ガスは、補助がある今のうちに「補助を除いた素の単価」で比較しておくのが合理的です。検針票や会員ページで基本料金・従量料金の単価、燃料費調整額、再エネ賦課金を分けて確認し、補助額を差し引いた実力値で他社と並べます。
第2層:保険は「更新月の1〜2か月前」が唯一の勝負どころ
自動車保険は過去に例のない幅の料率引き上げ
損害保険料率算出機構の公表によると、同機構は2026年6月23日に自動車保険の参考純率改定を金融庁長官へ届け出て、6月30日に適合性審査結果通知を受領しています。報道では今回の改定率は全国平均で14.4%の引き上げと伝えられており、前回2024年6月の改定(平均5.7%)を大きく上回る水準とされています。
ただし参考純率がそのまま保険料になるわけではありません。参考純率は保険金の支払いに充てる部分の目安であり、各社がこれを参考に自社の付加保険料などを乗せて商品の料率を決めます。反映の時期と幅も会社ごとに異なり、報道では損害保険ジャパンが2026年7月に1.8%、東京海上日動火災保険が10月に6.5%、MS&ADインシュアランスグループが2027年4月に6%程度の改定を予定していると伝えられています。自分の契約がいつ・どれだけ上がるかは、契約中の保険会社からの案内で確認してください。
火災保険と生命保険は「入りっぱなし」が一番高くつく
火災保険についても、同機構は2021年5月21日の届出で住宅総合保険の参考純率を全国平均10.9%引き上げ、さらに2023年6月21日に改定を届け出て6月28日に通知を受領しています。この改定では水災料率の細分化が導入されました。自然災害による支払い増と修繕コストの上昇が背景とされ、更新のたびに保険料が上がりやすい構造が続いています。
生命保険はどうか。公益財団法人生命保険文化センターの「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」では、生命保険(個人年金保険を含む)に加入している世帯の年間払込保険料は平均35.3万円とされています。月あたり約2.9万円で、通信費より大きい家庭も珍しくありません。
保険で削減が効くのは、値上げの直撃を受ける更新・満期の直前です。具体的には、車両保険の要否と免責金額、火災保険の水災補償の要否(ハザードマップ上の位置で判断)、生命保険の保障額が今の家族構成に合っているかの3点を更新月の1〜2か月前に見るだけで、惰性の上乗せをかなり止められます。
第2層:通信費は「容量の設計ミス」を直すのが最短
総務省は2026年6月30日に「電気通信サービスに係る内外価格差調査」の令和7年度調査結果を公表しました。調査時点は2025年12月で、東京・ニューヨーク・ロンドン・パリ・デュッセルドルフ・ソウルの6都市を購買力平価で比較したものです。
示された傾向は、東京のスマートフォン料金は5GB・20GBといった中容量帯では国際的に低い水準にある一方、データ無制限プランや大容量帯では相対的に高い水準にあるというものでした。光回線(FTTH)については、通信速度あたりの料金で東京が6都市中2番目に低い水準とされています。
この結果は家計の見直しにそのまま使えます。通信費が高止まりしている家庭の多くは「回線が高い」のではなく「使っていない容量を買っている」状態にある、ということです。まずやるべきは値下げ交渉でも乗り換えでもなく、直近3か月の実データ使用量を確認すること。各社の会員アプリで月ごとのGB数が確認できます。無制限プランに入っていて実使用が20GB未満なら、中容量プランへ落とすのが最も確実な削減になります。
あわせて点検したいのが、通信に紐づく「気づきにくい固定費」です。端末補償、留守番電話や着信転送などのオプション、光回線のセット割の適用条件、そして放送受信料。NHKの受信料は2023年10月の値下げ以降、地上契約が月1,100円、衛星契約が月1,950円とされています(前払割引の適用可否を含め、最新の金額はNHKの公式案内で確認してください)。衛星放送を実質見ていないのに衛星契約のままになっていないかは、一度確認する価値があります。
第3層:住宅ローンは「金利1%時代」の入口にある
日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で金融市場調節方針を変更し、短期金利(無担保コールレート・オーバーナイト物)の誘導目標を「0.75%程度」から「1.0%程度」へ引き上げることを決定しました。政策金利が1%に達するのは約31年ぶりの水準とされています。
変動金利型の住宅ローンは、この短期金利を参照する短期プライムレートを経由して基準金利が決まるため、政策金利の変更は時間差で返済額に効いてきます。民間の分析では2026年後半に短期プライムレートの引き上げが公表され、秋以降に多くの銀行で基準金利が見直される展開が有力とみられていますが、これは見通しであって確定した情報ではありません。実際の適用時期と幅は、借入先の金融機関からの通知で確認してください。
ここで焦って借換えに走るのは順序が逆です。借換えには事務手数料・保証料・登記費用がかかり、残債と残期間によっては費用を回収できません。先にやるべきは、金利タイプと適用金利、残債、残期間、5年ルール・125%ルールの有無を契約書で確認すること。そのうえで、団体信用生命保険の特約(がん保障など)が加入中の生命保険と重複していないかを点検すると、第2層の見直しと一体で効かせられます。
結論:この夏から3か月でやる順番
ここまでの材料を、実行順に並べ直すと次のようになります。
- 8月まで:電気・ガスの検針票を開き、補助額を差し引いた素の単価で他社と比較する。支援は9月使用分までのため、10月以降の請求増を先に織り込んでおく
- 8〜9月:直近3か月のデータ使用量を確認し、無制限・大容量から中容量へ。端末補償や不要オプション、衛星契約の要否も同時に点検する
- 更新月の1〜2か月前:自動車保険(参考純率が2026年6月に大幅引き上げの届出)と火災保険の補償内容を見直す。生命保険は保障額が現在の家族構成に合っているかを確認する
- 通知が届いたら:住宅ローンの適用金利変更の案内を保管し、残債・残期間と諸費用を並べたうえで借換えの損益分岐を計算する
固定費の見直しは、1回で全部やろうとすると途中で止まります。効果が確実で手数の少ない電気・ガスと通信を先に片づけ、更新月というカレンダー上の期限がある保険を次に置き、審査と費用が絡む住宅ローンを最後に回す。この順番であれば、途中で止まっても削減額は積み上がったまま残ります。
なお本文の数値・制度は2026年7月時点で確認できた公表情報にもとづくものです。補助単価や料率、金利は今後変更される可能性があるため、実際の判断にあたっては各機関・各社の公式発表を確認してください。
参考にした情報源
- 統計局ホームページ/家計調査報告 ―月・四半期・年―
- 電気・ガス料金支援|経済産業省 資源エネルギー庁
- 自動車保険参考純率|損害保険料率算出機構
- 損保料率機構、自動車保険の参考純率14%引き上げ|一般社団法人 日本自動車会議所
- 火災保険参考純率|損害保険料率算出機構
- 火災保険参考純率 改定のご案内|損害保険料率算出機構 プレスリリース
※ 本記事は 2026年7月28日 時点で公開されている情報を元に作成しています。制度や仕様は変更されることがあるため、判断の前に公式の発表をご確認ください。
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