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固定費は「金額が大きい順」に並べても削れない
総務省が2026年2月6日に公表した家計調査報告(家計収支編)の2025年平均によると、二人以上の世帯の消費支出は1世帯あたり1か月平均314,001円でした。前年比では名目4.6%の増加、物価変動(3.7%)を除いた実質では0.9%の増加とされています。調査対象となった世帯の平均人員は2.87人です。
家計を見直すとき、多くの人はまず金額の大きい費目から手をつけようとします。ただ固定費に関しては、この順番はあまりうまくいきません。金額が大きい支出ほど、自分の意思で単価を動かせない構造になっていることが多いからです。
固定費を実際に削るなら、並べる軸を「金額」から「自分で動かせる余地」に変えたほうが早く効きます。具体的には、次の3つに分類してから優先順位をつけます。
- 契約先そのものを変えられるもの(通信費、電力・ガスの料金プラン部分、保険、サブスク)
- 単価が制度や自治体で決まり、使用量でしか動かないもの(水道・下水道、電気代のうち賦課金部分)
- 単価が法令で決まり、払い方でしか動かないもの(国民年金保険料など)
以下、2026年7月時点で確認できる具体的な数字で、この3分類がどう効いてくるかを見ていきます。
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電気代には「どの会社に乗り換えても同じ」部分がある
電気代の請求は、基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)などで構成されています。このうち再エネ賦課金は国が全国一律の単価を決めるため、どの電力会社と契約していても金額は変わりません。
経済産業省は2026年3月19日に2026年度の賦課金単価を公表しており、単価は1kWhあたり4円18銭(税込)です。適用期間は2026年5月分から2027年4月分までとされています。2025年度は3円98銭でしたので20銭の引き上げとなり、制度上はじめて4円台に乗ったことになります。
中部電力ミライズが公表しているモデルでは、1か月の使用量260kWhの家庭で賦課金の負担は月1,086円(税込)となり、2025年度の1,034円から52円の増加です。使用量が月400kWhの世帯なら、単価4円18銭を単純に掛けると月1,672円、年間では約2万円がこの項目だけで発生する計算になります。
制度が始まった2012年度の単価は1kWhあたり0.22円でした。十数年で単価が大きく上がってきた項目であり、しかも電力会社の乗り換えでは1円も減らせません。この部分を減らす手段は、使用量そのものを減らすか、自家消費に回すかに限られます。
逆にいえば、電気代の見直しで実際に動かせるのは基本料金と電力量料金の設定、そしてガスや通信とのセット割の部分です。「電力会社を変えたのに思ったほど下がらない」と感じる場合、請求内訳のうち動かせない部分の比率が高い可能性があります。まず明細を開いて、賦課金がいくらを占めているかを確認してみてください。
水道・下水道は「乗り換え先がない」固定費
水道と下水道は地域ごとに事業者が1つしかなく、契約先を選べません。しかも老朽化した管路の更新費用や耐震化の必要から、2026年に入って改定が相次いでいます。以下はいずれも各自治体が公表している内容です(2026年7月時点)。
- 長野県松本市:2026年4月1日から水道料金を改定。平均改定率は20.11%。13ミリ口径・1か月14.4立方メートル使用のモデルで2,030円から2,490円へ460円の増加。実際の請求への反映は2026年6月検針分からとされています。
- 静岡市:2026年6月使用分から水道料金・下水道使用料を改定。一般家庭にあたる少量使用者の改定率は約8.2%で、2〜3人世帯(2か月で40立方メートル)のモデルは10,768円から11,648円へ880円の増加。能登半島地震の経験を踏まえた耐震化の加速が理由の一つとされ、15年間で約1,031億円の財源不足が見込まれると説明されています。
- 札幌市:2026年10月1日以降の使用期間から下水道使用料を平均22.6%改定。1997年以来、約30年ぶりの改定です。維持管理費が直近10年間で33%増加した一方、使用料収入は前回改定時の220億円から195億円へ減少したことを理由に挙げています。
改定率も時期も自治体ごとにまったく異なるため、全国平均を見ても自分の家計の予測には使えません。住んでいる市区町村の上下水道局のページを直接確認するのが唯一の方法です。そして確認したあとにできることは、使用量を減らすか、値上がり分を他の費目で吸収するかのどちらかになります。
社会保険料は「単価」ではなく「払い方」で動く
国民年金保険料は法令で全国一律の額が決まっており、交渉も乗り換えもできません。日本年金機構によると、令和8年度(2026年度)の保険料は月額17,920円、令和9年度は18,290円とされています。
ただしこの費目には、単価そのものは動かせないものの、支払い方法で総額が変わるという例外があります。前納制度です。
令和8年度の前納額と割引額
- 口座振替の2年前納:417,150円(毎月納付と比べて17,370円の割引)
- 口座振替の1年前納:210,530円(同4,510円の割引)
- 口座振替の6か月前納:106,300円(同1,220円の割引)
- 現金・クレジットカードの2年前納:418,510円(同16,010円の割引)
口座振替で2年前納した場合の割引額17,370円は、月額保険料のおよそ1か月分に近い水準です。ただし40万円超をまとめて用意する必要があり、年度の途中で就職して厚生年金に切り替わった場合は還付の手続きが発生します。現金で申し込む場合は毎年2月1日から事前申出の受付が始まり、提出期限は3月末とされています。納付方法ごとの条件と期限は、日本年金機構の公式案内を確認してください。
「削減できる順」に並べ直すとこうなる
ここまでの分類を、実際に手をつける順番として整理すると次のようになります。
- 第1優先:契約先を変えられて、手続きが一度で終わるもの。通信費、電力・ガスの料金プラン、保険、サブスクリプションが該当します。一度切り替えれば効果が毎月続くため、かけた時間あたりの削減額が最も大きくなります。
- 第2優先:払い方で総額が変わるもの。国民年金の前納のほか、保険料や年会費の年払いへの切り替えなどです。手続き自体は軽い一方、まとまった資金が必要になる点は事前に確認が要ります。
- 第3優先:使用量でしか動かないもの。水道・下水道、電気の使用量、再エネ賦課金の負担額がここです。効果は出ますが生活の質と直結するため、無理をすると続きません。
- 手をつけない:単価も払い方も動かせないもの。ここに時間をかけるより、第1優先の項目をもう一段見直したほうが結果は出ます。
再エネ賦課金の20銭の引き上げや、平均20%を超える水道・下水道の改定は、家計側の努力では止められません。だからこそ、動かせる項目でどれだけ先に余裕を作っておけるかが実際の差になります。
見直す前に確認しておきたいこと
この記事に挙げた数値は、いずれも2026年7月時点で各機関が公表している内容にもとづいています。賦課金単価は年度ごとに改定され、水道料金は自治体ごとに時期も率も異なり、保険料額も年度で変わります。実行に移す前に、経済産業省・契約中の電力会社・お住まいの自治体・日本年金機構の公式発表で最新の数値を確認してください。
また、契約の乗り換えを検討する際は、月額の比較だけで判断しないことをおすすめします。通信であれば端末の残債や解約時の条件、保険であれば解約による保障の空白、電力・ガスであれば解約金や最低利用期間の有無が、月額の差額を上回ることがあります。「毎月いくら下がるか」と「切り替えに一度いくらかかるか」を並べて比べるのが、固定費見直しで失敗しにくい進め方です。
そして、一度にすべてを見直そうとしないことも大切です。第1優先の項目を1つずつ、明細を見ながら順に処理していくほうが、結果的に最後まで到達しやすくなります。
参考にした情報源
- 2026年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金単価について(中部電力ミライズ)
- 家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)12月分、10〜12月期平均及び2025年平均(総務省)
- 令和8(2026)年4月1日から水道料金を改定します(松本市)
- 2026年6月使用分から水道料金・下水道使用料を値上げします(静岡市)
- 下水道使用料改定のお知らせ(札幌市)
※ 本記事は 2026年7月29日 時点で公開されている情報を元に作成しています。制度や仕様は変更されることがあるため、判断の前に公式の発表をご確認ください。
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