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まず2026年8月時点の数字をそろえる
住宅ローンは、多くの家庭で最大の固定費です。だからこそ「借り換えれば安くなる」という話が繰り返し出てきますが、2026年に入ってから前提そのものが動いています。判断の前に、いつ時点の何を見ているのかをそろえておきます。
日本銀行は2026年6月15〜16日の金融政策決定会合で、政策金利(無担保コールレート翌日物)の誘導目標を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げることを決めました。日本銀行のサイトでも6月16日付で「金融市場調節方針の変更について」が公表されており、1%台の政策金利は約31年ぶりの水準とされています。
これを受け、三菱UFJ銀行の短期プライムレートは2026年8月3日から年2.375%になりました(同行サイト、2026年8月時点)。改定前は年2.125%で、引き上げ幅は0.25%です。変動金利型住宅ローンの基準金利は短期プライムレートに連動する扱いが一般的とされるため、変動金利は「これから上がる方向」の局面にあります。
一方で長期固定はすでに高い水準です。住宅金融支援機構が公表する【フラット35】の2026年8月資金受取分(返済期間21年以上35年以下・融資率9割以下)は年3.290%〜年5.570%で、最も多い金利は年3.290%でした。それでも借り手の多数派は変動型です。同機構の「住宅ローン利用者の実態調査」(2026年1月調査、2026年2月20日公表。2025年4〜9月に借り入れた20〜70歳、回答1,237件)では、変動型75.0%、固定期間選択型14.9%、全期間固定型10.1%。変動型は前回の2025年4月調査から4.0ポイント下がっています。
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「金利差0.3%あれば得」は目安であって条件ではない
借り換えの説明でよく見かけるのが「残高1,000万円以上・残期間10年以上・金利差0.3%以上」という目安です。これは民間サイトで広く紹介されている経験則であって、制度上の基準ではありません。実際の可否は、諸費用を差し引いたあとに手元に残るかどうかで決まります。
諸費用の中身を、公表されている金額で見てみます。SBI新生銀行の住宅ローンでは、事務手数料が借入金額×2.2%、抵当権設定費用が借入金額×0.4%(登録免許税)と案内されています(同行サイト、2026年8月時点)。仮に3,000万円を借り換えると、事務手数料66万円と抵当権設定12万円で78万円。ここに旧ローンの抵当権抹消費用(登録免許税は不動産1個につき1,000円とされ、土地と建物で2,000円程度)と司法書士報酬、契約書の印紙税が乗ります。同行は電子契約なら印紙税は不要で、代わりに電子契約利用手数料5,500円としています。
つまり借り換えの判断は、金利差そのものではなく次の割り算に集約されます。
- 諸費用の総額 ÷ 1年あたりの利息軽減額 = 回収にかかる年数
- 残りの返済期間がその年数を大きく上回るか
- 事務手数料は定率型(借入金額×2.2%など)と定額型のどちらを選べるか
- 諸費用をローンに上乗せする場合、借入額が増えて利息も増えることを織り込んだか
残高が小さい、あるいは残期間が短いほど、この割り算は成立しにくくなります。金利差だけを見て「0.3%あるから得」と決めるのは順序が逆で、先に諸費用の見積もりを取ったうえで、金融機関の返済シミュレーションで総返済額を比較してください。
例外1:毎月の引き落とし額が変わっていない=上がっていない、ではない
変動金利で借りている人が見落としやすいのがここです。三菱UFJ銀行の案内では、変動金利かつ元利均等返済の場合、金利が変わっても次回の見直しまで返済額は変わらない「5年ルール」と、見直し時も直前の返済額の125%を超えない「125%ルール」が適用されます。同行は元金均等返済にはこれらのルールはないとしています。
返済額が据え置かれている間、金利上昇分は元金と利息の内訳の変化として吸収されます。多摩信用金庫の説明によれば、金利が上がると利息の割合が増えて元金の減りが遅くなり、返済額を上回るほど利息が膨らんだ場合は未払利息が発生します。返済金の充当順序は「①未払利息 ②約定利息 ③元金」とされ、未払利息が出ると元金への充当がさらに減ります。
したがって、通帳の引き落とし額が去年と同じでも、それは負担が変わっていない証拠にはなりません。借り換えを検討するときに見るべきは月々の返済額ではなく、現在の適用金利・残高・残期間の3つです。
なお、5年ルール・125%ルールは法律で決まったものではなく、金融機関ごとの商品仕様です。ソニー銀行、SBI新生銀行、PayPay銀行などは採用していないとされ、この場合は金利上昇が比較的早く返済額に反映される代わりに未払利息は積み上がりません。自分の契約がどちらかは、約款や返済予定表で必ず確認してください。
例外2:借り換えたくてもできない、あるいは不利になる場合
団体信用生命保険に入り直しになる
借り換えは新しいローンを組み直す手続きなので、団信も新規加入になり、健康状態の告知と引受審査が必要です。借入当初は健康でも、その後の病歴によっては通らないことがあります。引受基準を広げたワイド団信は金利に0.2〜0.3%程度上乗せされるのが一般的とされ、その分だけ金利差が削られます。持病がある場合、借り換え可否は金利計算より先に確認しておく項目です。
住宅ローン控除は借り換えで延びない
国税庁のタックスアンサーNo.1233によると、借換え後のローンで住宅借入金等特別控除を受けるには、(1)新しい住宅ローン等が当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らかであること、(2)新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であることなど控除の要件に当てはまること、の両方を満たす必要があります。控除を受けられる年数は居住の用に供した年から数えた期間であり、借換えによって延長されることはありません。
さらに、借換えによる新しいローンの当初金額が借換え直前の残高を上回る場合、控除対象となる年末残高は「新ローンの年末残高×(借換え直前の残高÷新ローンの当初金額)」で按分されます。諸費用をローンに上乗せして借入額を膨らませると、上乗せ分は控除の計算から外れることになります。
返済期間を延ばせば月額は下がるが総額は増える
借り換えと同時に返済期間を延ばすと毎月の負担は軽くなりますが、利息を払う期間が延びるため総返済額は増えるのが通常です。「月々いくら下がったか」だけで比較すると、この差が見えません。また期間を10年未満に短縮する借り換えは、上記のとおり住宅ローン控除の要件から外れます。
検討の順番を間違えないための確認手順
ここまでを踏まえると、動く順番は次のようになります。金利比較サイトを見るのは最後で構いません。
- 返済予定表と契約書を出し、金利タイプ・現在の適用金利・残高・残期間・約定返済日を書き出す
- 5年ルール・125%ルールの有無と、未払利息が出ていないかを確認する
- 金利見直しがいつ返済額に反映されるかを確認する。三菱UFJ銀行の場合、年2回型は2026年4月1日を基準日として2026年6月の返済日の翌日から、毎月型は毎月1日を基準日として2026年4月の返済日の翌日から反映と案内されており、この仕組みは金融機関・商品ごとに異なります
- いま借りている金融機関に、条件変更(金利引き下げ)の相談ができるかを先に聞く。取扱いは金融機関によって異なるため、公式の窓口で確認してください
- そのうえで他行の見積もりを取り、事務手数料・登記費用・保証料・繰上返済手数料を含めた総額で比較する
借り換えは、条件がそろえば効果の大きい固定費の見直しです。ただし効果が出るかどうかは金利差だけでは決まらず、諸費用の回収年数、団信の審査、住宅ローン控除の要件という3つの関門を通過して初めて成立します。本記事の数値はいずれも2026年8月時点の公表情報にもとづくもので、金利も手数料も改定されます。実際に動く際は、各金融機関と国税庁の最新の公式発表を確認してください。
参考にした情報源
- 金融政策決定会合の運営(2026年)|日本銀行
- 日銀6月会合、政策金利を1%に引き上げ|日本経済研究センター
- 短期プライムレート|三菱UFJ銀行
- 【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しについて|三菱UFJ銀行
- 返済方法の選び方(住宅ローン)|三菱UFJ銀行
※ 本記事は 2026年8月20日 時点で公開されている情報を元に作成しています。制度や仕様は変更されることがあるため、判断の前に公式の発表をご確認ください。
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